銀行がブロックチェーンの実証実験を始めていることは先述しましたが、保険業務や証券市場など、銀行以外の金融サービスでの応用も期待されています。たとえば、モノを輸入・輸出する際には、万が一のことを考えて保険がかけられます。
モノの輸出、または輸入が完了してモノの所有者が移りかわると、保険証券も売り手から買い手に所有権が移ります。従来の方法は保険証券は紙での発行が中心でした。しかし、紛失の危険性があり、売り手から買い手へ譲渡されるのに時間がかかるのが悩みの種でした。改ざんなど不正行為の危険もあります。
保険証券をデータ化してブロックチェーンで管理してすれば、手続きに時間を取られずに済みますし、信用状や商業送り状、船荷証券も一緒にデータ化して保険証券との関連性を持たせる実験が日本の某保険会社で行われました。
実験結果は、時短、コスト削減、リスク軽減どの面においても満足のいく結果だったようです。今後はさまざまな輸入・輸出関連企業での利用を提案していくようです。
証券発行業務の手続きの簡略化、コスト削減は証券取引でも重要な課題となっています。例えば、企業が証券取引所に上場するためには、非常に煩雑な事務手続きが必要です。膨大な時間とお金がかかります。
一般投資家の取引内容の照合や口座の管理、決済業務も証券会社の大事な仕事です。これにも管理コストがかかります。これらもブロックチェーンを利用すれば安全安心な取引、コスト削減が実現できると考えられています。
こうしてみるといいこと尽くめのように見えますが、このようなブロックチェーンブームとも言えるような現象に懐疑的な意見もあります。
ブロックチェーンは新しいデータがチェーンのようにどんどん繋がっていきますが、何かのきっかけで分岐(フォーク)することが報告されています。計算の解を偶然複数のノード(ユーザー)が同時に発見したり、新旧のソフトウェアが混在、あるいは悪意のあるノードが虚偽の取引を繋げた場合は分岐する危険性があります。
ブロックチェーンは分岐の発生を防ぐことはできないつくりになっています。ブロックチェーンは異なる2つのチェーンを一つに統合することは非常に難しいといわれています。ブロックチェーンは、
短いチェーンを無視して長いチェーンに繋がっていくという性質をもっています。過去に精製されたブロックチェーンが無視され、もう一本のチェーンが延々と繋がっていけば、二重帳簿となる危険性もあるのです。ただ、これはしっかりした管理体制を整えれば、それほど問題ではないようです。
また、多くの企業がブロックチェーンに期待しすぎだという声もあります。多くの企業がブロックチェーンの実体をよく知らないまま、多額の費用を投じている例も多いようです。
ブームに便乗して、深く理解しないまま一儲けしようとすると、痛い目に遭うのは目にみえています。技術革新は必要ではありますが、絵に描いた餅にならないようにしてほしいですね。