仮想通貨はそれ自体が投資対象になっているばかりでなく、投資のスタイルにも大きな変化を与え始めています。
IPOという言葉をご存知でしょうか?initial public offeringの略で、日本語では新規株式公開とよばれており、会社が証券取引所に上場することです。上場することによって、それまでは創業者など限られた人だけが保有していた株を、不特定多数の人が自由に売買できるようになります。
会社は上場することによって資金調達をしやすくなります。一口に株式公開といっても、上場までにはいくつもの高いハードルを越えなければなりません。財務状況、会社の管理体制などきびしいチェックをいくつも受けることになります。
また、手続きには莫大な費用がかかります。ケースバイケースですが、数千万円にのぼることもめずらしくありません。上場後、敵対的買収(TOB)を仕掛けられるリスクもあります。
しかし最近はこうした手続きのわずらわしさや膨大な費用をかけずに資金調達する方法、ICOが注目されています。ICOはinicial coin offeringの略です。株式公開のpublicが入る部分にcoinが入っています。そう、ICOは資金調達を株ではなく仮想通貨でやってしまおう!ということなのです。
ICOにはいくつかやり方があるのですが、あるアメリカのベンチャー企業を例にとってICOの流れをみてみましょう。この会社は新しいインフラシステムを開発しようとしています。そして、このインフラの中で使える専用仮想通貨を、数量限定で事前に販売します。
このインフラが広く利用されることになれば、専用仮想通貨は高い価値をもつことになります。この企業の発行した仮想通貨は、世界中から購入者が殺到し、3時間ほどで160億円以上の資金調達に成功したそうです。
ベンチャー企業にとって、資金繰りはつねに悩みの種です。大手企業のように株式公開するわけにはいきませんし、借りるといっても、貸してくれる銀行を見つけるだけでも一苦労です。借りられたとしても、利息も含めてかなりの額を返済しなければいけません。
しかし、ICOであれば借金を背負うことなく資金調達ができるのです。IPOは抽選で当たった人しか購入できませんが、ICOは不特定多数の人から、しかも世界中から資金を集めることが可能なのです。もちろん事業内容に魅力がなければ相手にされませんが。
投資する側にとってのメリットは、今まで限られた人や投資信託会社しか手の出せなかった将来有望なベンチャー企業に個人で投資できるようになったことです。いま、ICOで資金調達するベンチャー企業が海外で増えてきています。
一見、企業側にも投資家にもメリットのある方法にみえますが、当然リスクもあります。その事業が本当に成功するかどうかは誰にも予想できません。株と同様、大きな損失をこうむることもあります。
また、今のICOは投機的な色合いがつよく、過熱しすぎという指摘もあります。日本ではまだ一般的な投資方法ではありませんが、今後は日本でも広まっていく可能性があります。投資するか否かはあなたの自由ですが、くれぐれも事業内容を熟知した上で無理のない金額で投資しましょう!